永遠の課題 塗装のブツについて
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お客様から帰り際の際によく聞かれることとして「補修箇所がわかんないんですけど、プロが見たら査定で補修はバレますか?」というご質問があります。
私はいつも「わかります!」と即答をします。
そこから「どういうところで判断するんですか?」なんて続きで質問された日には、自分の不出来の部分を指ささなければいけないのでバツが悪いのですが、しょうがない。それが現実。言い訳させてもらうと、私もランボルギーニやベントレーをバンバン取り扱う有名店の塗装やカスタムカーショーに展示してある車を見てきましたが、やはり「塗装した」とすぐにわかる。みんなそうだよねと半ば安心している節があります。
わかる判断材料はいくつかありますが、その中でわかりやすい部分として、「塗装のブツ=ゴミ、ホコリ」があげられます。
塗装ブツはペインター永遠の課題

塗装というのは最初から最後までのどの工程でもミスがあれば最初からやり直しという非常にストレスのかかる作業です。

最後の工程、塗装後の研磨で地が出てしまった時はペインターは必ずフリーズする。納期が迫って焦って作業してこうなるともう最悪。ショットガンの出番
上の写真のように最終的な完成までには何度も吹き付けの塗装をする工程があります。この中で容易に想像できるのがゴミの混入です。
塗装は透明な接着剤を大量の空気で均一に吹き付ける行為
塗料というのは単純に考えればほぼ接着剤です。そこに色を加えたり、透明ならばクリヤー塗装ということになります。そんなこと、汚れなく塗装するなんて、もう、無茶ぶりでしょう。
つい最近、国産高級車のリアバンパーにもブツがありました。それはどう見てもロボットの塗装仕事で補修塗装には私には見えませんでした。メーカーの品質管理でもゼロは実現できないみたいですね。

ブツに対する執念の戦い
ブツはいろいろなところからやってきます。最初に思いつくのは塗装物そのものですね。塗装前には塗装面にそもそもブツが無いようにしないといけませんよね。そのためにタッククロス「城鈑金用語=ネチャネチャ」で表面は綺麗にします。

あと、塗装面には静電気を帯びていますから静電気対策もします

お次に、意外にも体からのホコリ飛散が多いのだとか。自分の防護以外にもホコリの飛散を防ぐ防護服をします。

あとは塗料自体の固形化した塗料はストレーナで濾過して、スプレーガンは綺麗にしておくことも基本です。↓

よい塗装環境は塗装ブースも大事
ここまでやってもまだブツはつきます。この綺麗にした環境を囲うバリアが必要です。どの塗装屋さんにもほぼ必ずあるものといえば塗装ブースですね。
塗装ブースは最高の塗装環境を提供してくれるものです。「良い照明、良い温度、良い空気」です。
良い照明は、塗装中の塗装肌の見やすさに影響します。横からの照明は普通の部屋には無いので、ベテランからするとよりよい塗装肌=純正の塗装っぽい仕上げを再現しやすくなります。若手の人は塗装がタレにくくなります。
良い温度は、寒い日はバーナーで温めるという意味で、これも塗装が早く固まるので、塗装時間の短縮になりますし、塗装もタレにくくなります。私は後者の意味で使っています笑 ちなみに冷房はありません。新鮮な空気を大量に出し入れするので、クーラーを入れても全く意味がないのです。
良い空気は、ホコリが少ないということで、一番のブース存在理由で、もうむしろここがすべて。ブツがかなり減らせます。
塗装ブースのブツへの執念
塗装ブースメーカーのブツ対策の執念は相当なものです。ここにいかにお金がかかるかがブースグレードの位置づけのような気がします。
【ブース種類】プッシュプル型ブース


まず上の写真のようにブースに取り入れる空気は綺麗でなければいけませんね。だからフィルターは2段構えで取り入れます。天井のフィルターは粘着剤付きで、ホコリを粘着させて捕集する入れ込みようです。

また、塗装中のブース内の気圧を常に外よりも陽圧にすることで、外からのホコリの侵入を防ぎます。
ブース内には気圧計があって、常にコンピュータ制御で気圧を一定に制御しています。塗装中に出入りするとブース内圧の数値が変化して、しばらくすると制御で元に戻ります。

静かな空気というのは塗装中にも大事なことで、強風の中で塗装する人はいませんよね。ブースは大きな音を出しますが、そのブース内は風を感じることはありません。ただ速やかに不要な霧は排出します。
【ブース種類】アコーディオンブースとカーテンブース

他にもアコーディオンの形をしたブースや病室のベッドカーテンのようなカーテンブースというのもよく見られます。アコーディオンは空気を引っ張るだけ、カーテンは上から空気が出て側面から排出します。
他にも床を掘らずにブース内のグレーチング床を斜めに底上げして下から空気を抜くブースなどもあります。
水まきという原始的な準備は効果あり
ブースもいろいろな種類がありますが、地面に水を撒くというのも昔から行われるホコリが舞わないためには効果的な対策です。これはわかりやすいですね。ただ、夏になると地面からの湿気と塗装服と手袋のこもりと、、、もう蒸し暑くて目が回ってきます。海外だとブース内に水を撒くという習慣が無いらしく、海外製ブースだと水をまけないとか。ちなみに夏は空気のじめじめのおかげでブツは少ないし塗装は早く固まるし、人間には過酷ですが、うまくこなせばいい面もあります。しかし、うっかりしていると手袋から汗がポタっと落ちかねません。暑い思いしてそうなったらショットガンの出番です。

頑張って夜まで塗装しているとやってくる悪魔
また、密閉の悪い塗装ブースだと虫も光と匂いに吸い寄せられて、つやつやの塗膜にピタッとくっつきます。虫もかわいそうだけどペインターもかわいそうな事態になります。生き物でもこれは立派なブツ。ブツというかもうやり直しのレベルです。これは頑張って夜までやっている夏の暑い日に限っておこることで、私は工場の照明にたくさん虫を見かけた日の夜は未来がみえるので塗装しないことを誓っています。
それでもブツはやってくる 最後は物理的に取る!

未然にブツを抑える方法はいくつかありましたが、それでも完璧にブツをのせないことは至難の業です。
塗装中についてしまったブツはこういった先端の細い道具でゴミを取り除きます。うまくブツが取れると気持ちがいいんですよこれが。
ということで、塗装というのは腕前も必要ではありますが、仕上がりには設備=塗装環境も非常に大事であることがわかります。お店選びの一つとして、私が考えるに、塗装者の腕というのは外見ではわかりませんが、工場の綺麗さというのは誰でも判別できると思います。これはいい設備だけでも周りが汚ければ同じこと。削る作業も多いので汚れがちな工場をいかにきれいに保っているか、ここは心がけの部分なので、ブツ対策に悩んでいるか、悩んでいるとしたら、少なくとも腕は悪くはないでしょう。良いお店かどうかの一つの目安になるのではないかと思います。


